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黒い下着の女 第十三話

 黒い髪、黒い下着と白い肌のコントラストがつやめかしい。女優がいるなら男優もいる。室内には、♂もいた。どうやらこのビデオ映像は、男の視界で撮られているらしい。しかし、どこか妙なのだ。女はそこにいて、全身が映し出されているのだが、男の姿はない。(男の視界で見られているのだから当然と言えば当然だが。)さきほどから全身を映し出されている女に対して、男の全身が映し出されることはけっしてないのだ。男の手や足が映し出されることはあっても、男の顔や全身が映し出されることはけっしてないのである。これはいったいどういうことか?

黒い下着の女 第十二話

 カメラクルー(当然、存在するだろう。)は、カメラを構えて、そのしょうじのふすまを(カメラで)捉えている。カメラ(クルー)がふりむく(180°回転)。しょうじと反対側の壁。部屋の奥とでも言いたくなるような、壁の面に向かう。そこに、女がひとりいる。ウェーブのかかった長い黒髪。白い肌。黒いガーターベルト。黒いショルダーガーター。黒いパンティー。黒いブラジャー。ビデオのレーベルの写真のあの女だ。

黒い下着の女 第十一話

 黒い背景に白抜きの文字列が消え、黒い画面が切り換わる。そこに映し出されたのは...、そこに映し出されたのは、どこかの室内だ。モダンな洋風の空間ではない。丸出しの和室である。畳の間にちゃぶ台はない。わりとせまい。室内に調度品のたぐいは少なく、全体的に殺風景な雰囲気を、Y男に与えた。部屋には、しょうじのふすまが一カ所だけ存在する。どうやらこれがこの部屋の唯一の出入り口らしい(と、Y男は思った)。

黒い下着の女 第十話

 Y男は、思わず目を閉じた。そして、ふたたび目を開ける。そこには、もう、女の顔はなかった。画面には、以前と同じ砂の嵐の映像が映っているばかりだ。あの女性の顔はなんだったのか。それとも、あれは、Y男の見た幻覚、一瞬の白日夢だったのだろうか。 ビデオ画面は、唐突に遷移した。砂の嵐が黒い画面に切り換わる。そこにデカデカと映し出される、白抜きの文字列。文字列は、“黒い下着の女”である。

黒い下着の女 第九話

 女性の長い髪の毛は、やはりウェーブがかかっている。長い黒髪。砂の嵐の画面で、どうして黒髪とわかるのか不思議だが。別に不思議なことではないかもしれないが。その、砂の嵐に映し出された女性の顔は、最初の間、顔および髪の毛の輪郭だけだったが、そのうちに首および肩の輪郭が形成されていく(ようにY男には思えた)。そして、いまや目鼻といった顔のこまかなパーツが形成されつつあった。 (こちらを見ている?!) Y男は、女性の顔の目がこちらを見ているような気がした。

黒い下着の女 第八話

 ブラウン管にいっぱいに砂の嵐が映し出される。砂の嵐はしばらく映し出されていた。少し長いな、とY男は感じた。しばらく待っても一向に画面が変わる気配がない。いくらなんでも長すぎるだろ、Y男がそう感じた瞬間だった。砂の嵐画面は相変わらずなのだが、そのパターンがある一定のパターンを持っているように、Y男の目には映ったのだ。それは、人の顔だった。それも、長い髪の女性だ。Y男は、どことなくその女性に見覚えがある気がした。そう、あのビデオレーベルの写真の女性だ。

黒い下着の女 第七話

それでキメる。最高。そう、彼は、立派なアシッドヘッドだったのだ。軽度~中くらい程度ではあるが。 Y男は、ビデオデッキのスロットにビデオテープを挿入した。レーベルは、もちろん『黒い下着の女』である。ビデオ(テレビ)のコントローラーを操作し、モードをテレビからビデオに切り換える。チャンネルをX-Ch(ビデオのチャンネル)に切り換える。

黒い下着の女 第六話

 刺激を求めてやまない性格...。そんな彼にとってなんの悩みもないもののあまり刺激もない人生など、単調なものでしかなかった。そういうわけで、彼は、たまに薬物を使用することがあった。薬物といっても化学剤のたぐいだが。その内訳は、シンナーとトルエンとセルロースのコンボである。

黒い下着の女 第五話

 彼には考えていることがあった。それは現在の自分の生活ひいては人生についてだった。悩みはない。悩みはないのだ、たしかに。悩みはない。しかし、彼(Y男)のイメージでは彼の人生のカラーは、あまり派手な色彩ではなかった。彼は、刺激を求める性格だったのである。

黒い下着の女 第四話

 Y男の自宅 Y男は、高校二年生(17歳)だ。両親とともに実家(自宅)暮らしである。都内の公立高校の二年生。学業成績は中の上。内申書の点数も悪くはない。学園生活で特に困った問題もない。対人関係で特に困ったことはない。まだ二年生であり、進学の準備期間でもない。先にも述べたように学業不振に悩んでいるということもない。いたって普通の高校二年生であった。

黒い下着の女 第三話

 ウェーブのかかった長い黒髪。黒いブラジャー。黒いパンティー。白と黒のガーターベルト。白と黒のショルダーガーター。白い肌と黒い下着のコントラストが物凄い。Y男は、アダルトビデオ、『黒い下着の女』を手に取った。Y男は、『黒い下着の女』をレンタルした。

黒い下着の女 第二話

 いろいろと物色している。その中で、Y男の目に止まったものがあった。『黒い下着の女』。そのビデオのレーベルには、そう書かれている。“黒い下着の女”という文字の下に、このアダルトビデオの主演の女優であろう女性の写真が入っている。その小さな矩形のスペースには、足を開いて腰をおろした女性の大腿から上の画(え)が写されている。女性は、下着姿だった。

黒い下着の女 第一話

 黒い下着の女 とあるレンタルビデオ店。Y男(仮名)。17歳。高校二年。学生アルバイト。Y男は、とあるレンタルビデオショップにいた。ビデオ(VHS)が、ラックにところせましと並んでいる。Y男(仮名)は、店内の一角にやってきた。Y男がやってきたのは、アダルトビデオのコーナーだった。